一
美濃の山越えて 嫁ぐ娘は「桜志野」と言われます
淡雪に似た 白無垢内掛け綿帽子
そろりそろりと 窯神さまへのお参りに
仰ぎ見る母の歩みにも似てとれる
気立ての良さを 窯元の灯では誉れと語り継ぐ
二
美濃の川越えて 花嫁さまは「桜志野」にたとえます
柔肌染める 黒振袖に角隠し
しゃなりしゃなりと 織部の里へもお披露目を
明日への誓いと夢を胸に秘めて
宴に寄せては 遠き思い出に季節はめぐりゆく
三
美濃の里越えて 嫁ぐ女に「桜志野」を伝えます
結ぶ縁にしか 赤内掛けに高島田
ゆらりゆらりと 窯屋敷の街を奏でながら
あでやか姿に緋色を浮かべてみては
土岐の流れに 想いを残してその身を写しゆく
一
紫に咲く 桐の花に染めた
浴衣姿の 背に刺す水団扇
盆提灯 赤く照らす人の輪から
あなたの踊りを 追い続けていた
二十歳を迎えたときには
ほんの少し 微笑ながら
郡上の夜は 踊り初めで舞い跳ねる
二
茜の色に 城山も暮れゆく
踊り囃子と やぐら太鼓の音に
宗祇水 手酌ですくい呑み干して
あなたの踊りは ふるさとの育ち
あの頃が滲んでみえる
ほんの少し 大人に見えた
郡上の夜は 徹夜踊りで想い焦がす
「郡上のなあ 八幡出てゆくときは・・・」
三
朝霧漂う 吉田川の堤
町並みに残る 面影を探して
山間は 人の情けと暮らしあり
あなたの踊りと 明日への夢よ
いつまでも振り付け残し
ほんの少し 輝き光る
郡上の夜は 踊り納めで振り返る
一
七色の 風起こして舞う
谷汲おどりは わらべ唄
ほほなでて 大空へ駆けのぼる
あの日の誓い 折り鶴に言伝て
遠い峰のその奥の
願い掛けの華厳寺へ
二
七重にも 響く鐘の音
横蔵めぐりは 子守唄
悟り寺 尋ね知る人のさま
あの日を話す 二人の夢路から
赤橋過ぎたあたりで
納め札の横蔵寺へ
三
七変化 もみじ谷ゆれ
語り部も守る 数え唄
水鏡 虹の架け橋映る
あの日の供養と しずかな祈りの里
揖斐の山にたたずみ
青くひかる夜叉池へ
一
ひとすじの炎に導かれ
縁結びへの道のりは 人恋しさ覚え
願い掛けに三寺まいり 真宗寺から
水辺にたたずむ 白壁の細道どおり
まだ見ぬ君に 憧れの鈴掛けるよう
「嫁を見立て」までにまだ早く
雪踏みの音と石畳の道は 細々続く
二
大ろうそくに明りも灯る
乙女らは出会いの場とは 知らぬ素振りしては
願い詣で三寺まいり 円光寺へと
粉雪舞い散る 瀬戸川のきらめきは
きつねの火とも 見つめるまなざしのよう
「髪を結わせて」までにまだ遠く
酒蔵辺りの家並みまで しんしん冷える
三
瞳の奥に灯りもゆれて
はやるこころと人並みに 流れる白い息
お礼まいり三寺まいり 本光寺まで
愛しき人は 何処にと尋ねての歩みに
あと三箇月まで 問いかけながら 唄うように
「起こし太鼓」までにまだ長く
降りしきる雪の精に合せ どどんと響く