美しい言葉でつづられる幻想の世界は、夢と現実のはざまを行き来します。
春の午後 コップの中に
ひとりでいると ゆるい光に
ついねむくなり うとうと
コップの部屋は 無色透明
ドアも窓も よおく見えるよ
目を閉じたまま とろとろ
Ah ……
ふと気づくと 水をそそいで
立ち去る影 コップの中は
夢じゃなくって くらくら
みかん色の ちいさな夕日
あわい夕焼け とともに沈む
コップの中へ ぷくぷく
もう誰も おまえを待ちはしない
もう誰も おまえは待たなくていい
時計は角砂糖 とけてゆく
水辺をごらん たよりなげに
咲きかけて コップにもたれ
見えない花が ゆらゆら
しろい月が コップのふちに
のぼっているよ 語りかける
でもなく足を ぷらぷら
もう誰も おまえを待ちはしない
もう誰も おまえは待たなくていい
時計は角砂糖 とけてゆく
illustration by まよままん